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ずっと伝えていきたい郷土の発酵食 〜和歌山のなれずし〜

 

日本には古くから続く地域独自の「発酵食」文化があります。

例えば、東北地方の「納豆」、関西地方の「なれずし」、沖縄の「豆腐よう」など、地域の気候や資源に応じた発酵食品が発展してきました。この多様性は、地域の生活様式や祭事にも影響を与え、発酵食文化が広く根付く一因となりました。

多くの発酵食品は、それぞれの地域の風土や食材から作られ、長い時間をかけて受け継がれています。日本の発酵技術は、単に食材を保存するだけでなく、栄養価を高め、私たちの今日の生活に欠かせない存在となっています。

 

なれずしの歴史と発酵

その中でも、和歌山県に伝わる「なれずし」は、長い歴史を持つ伝統的な発酵食品のひとつです。なれずしは、日本における最古の寿司の形態で、魚と米を塩漬けにして発酵させる食品です。この発酵の過程で乳酸菌が増殖し、魚の風味を柔らかくしながら酸味を加えます。この乳酸発酵の技術により、冷蔵庫もなく保存が難しかった時代でも貴重な魚を長期保存できるようになりました。

和歌山県のなれずし文化は、紀伊半島の山間部や沿岸部で古くから受け継がれてきました。特に、サバを使った「サバなれずし」が有名で、地元の豊かな水産資源を利用した郷土料理として親しまれています。

なれずしは季節行事やお祝い事に欠かせない料理であり、その作り方や食べ方は地域ごとに異なり、各家庭で大切に受け継がれてきました。私は、なれずしを中心に、郷土の発酵食を次世代に伝え続けたいと常々考えています。

 

和歌山の風土と発酵

和歌山県は山と海に囲まれた自然豊かな地域で、その風土が発酵食文化に大きく影響を与えています。特に、清らかな水源で育った魚を使ったなれずしは、和歌山の名物料理となっています。

脂の乗ったサバが大量に釣れた時には、たっぷりの塩をサバにまぶして1週間以上置き、塩出ししたサバを使ってなれずしを作り、秋祭りのご馳走として振る舞われました。しかし、現代ではなれずしを作る家庭は少なくなってきています。

 

なれずし作りの技術を次世代に引き継ぎたい

私の実家では、父親がなれずしを仕込み、母がそのサポートをする姿を小さい頃から見てきました。父も自分の父からなれずし作りを学び、見よう見まねで作り始めたそうです。

なれずし作りはあせやバラン、しゅうろを収穫するなど必要な準備や工程があり、1人では到底できません。家族や親戚が集まり、それぞれに役割を分担しながら仕込んでいました。中学生になってからは、私も手伝えるところを手伝い、家族で一緒に作ることが一つのイベントでした。

私の父は80歳を超えても、仕事もゴルフも現役でとても元気です。そんな父が作る「なれずし」を絶やしたくない、きちんと聞けるうちに作り方を引き継ぎたいと、強く思っています。

身近に美味しい漬物を漬ける人や、美味しいお寿司や煮物を作る人がいて、そうした料理のレシピや技を聞けるうちにしっかり受け継ぎ、子や孫へ引き継いでいきたいものです。

 

実際になれずし作りにチャレンジ!

去年からは、父の手伝いをしながら、私自身でも1からなれずしを作り始めました。まずは小さくサバを切ったなれずしを仕込んでみたのですが、やはりサバの半身を使った、ご飯の上にマルっとサバが乗ったなれずしの方が美味しい!なので、今年はその本格的ななれずし作りにチャレンジしました。

まずは、塩サバを3枚におろして腹骨だけを取り、どっさりと塩をまぶすところからスタート!塩サバは、国産の焼津産サバと、脂の乗ったノルウェー産サバの両方を仕込むことにしました。

塩はサバが見えなくなるくらいどっさりまぶします。そうすることで、余分な水分や臭みを抜き、長期保存が可能になります。発酵食において、塩の役割はとても重要です。

今回作ってみて改良が必要だと感じたのは、サバの塩抜きです。もう少ししっかり塩を抜かなければいけないと、出来上がったなれずしの味を見て感じました。

また、手伝っていた時には気づかなかったポイントが、自分で作ってみるといくつも発見でき、やはり自分で一から作ることの大切さを改めて実感しました。

 

意外になれずし好きが多い!?

今回、なれずしが完成した後、インスタライブをしましたが、思っていた以上に「なれずしを買いたい!」というお問い合わせが多くて驚きました!なれずしは好き嫌いがあって、和歌山市内の方は食べないと思い込んでいましたが、実際には好きな方も多いようですね。

なれずし好きな方に食べていただいて、味の感想をいただき、来年はもっと美味しく改良してレシピにおこします!来年はたくさんの方々となれずし作りに挑戦できたら嬉しいです!

 

次回のなれずし作りは来年の10月

なれずし作りに興味がある方がいれば、来年の10月初めに一緒に仕込みましょう!
皆さんと一緒に、和歌山の伝統的な発酵食品「なれずし」を作り、その素晴らしさを次世代に伝える楽しさを共有できることを楽しみにしています。